【100日経っても幸せなヤツ】79日目
結果は散々だった。
だいたい、大きすぎる。強いという次元を超えている。
掴んでいた棒切れは一瞬で砂の山に放り投げられていた。
「なんなんだこの規格外の体は!」と生き物は自分の腕に絡みつくモルタルをぺしぺしと叩いた。
「もう一度聞く、下等生物、どこから来た?」
生き物は身振り手振りで、谷の底から来たことを伝えた。
「そんなところで生きてきたのか…?」
化け物は目も口も持っていなかったが、母親の様な温かいまなざしをしているの事生き物は何となく察した。
「よく生きていたな、同胞」
そう笑って、化け物は生き物から手を放し頭を撫でる。でろでろとした汚物に体が塗れるのは非常に不快だが、不思議とその行為自体は嫌ではなかった。
同胞とは何だろう?と首を傾げる生き物に「貴様、さては何も覚えていないな?」と化け物は笑った。
「では、語ってやろう」
化け物は、生き物を近くに座らせて、ゆっくりと昔話を始めた。