【100日経っても幸せなヤツ】96日目
生き物は、昨日気付いたことを反芻していた。
確かに数カ月前まで、生き物には友人がいなかった。
生きる意味は、自分を生かすため、少しでも長く生きて子孫を繫栄させる事だった。
感情の意味も分からなかった。
そんな生き物に急激に変化が訪れ、種族の違う仲間ができ、今一緒に生活している。
自由な猫とドラゴンは、気が付いたら探検に行っているが、またふらりと帰ってくるようになった。
これは「幸せ」だ。
生き物は手に入れた「幸せ」があまりにも脆く、あまりにも輝いていることに気が付いた。
そのことの尊さと恐ろしさを実感して震える生き物の肩を天使が小さく叩く。
「大丈夫」と囁きながら天使は生き物を抱きしめた。
こんなことをされたのは初めてだ。ぬくもりが温かく、柔らかい。
思わず涙腺が緩む生き物は、声を殺して小さく泣いた。