【100日経っても幸せなヤツ】93日
昨日の残りのアップルパイを齧りながら、生き物はぼんやりと外を眺めていた。
谷の底は、地上よりずっと空気が澄んでいて、美味しい。
音も静かで、燃えたり、ずっと雨が降ったり、何かに襲われることもない。
幸せだなと家の前の芝生に横になると、生き物の熊のような腕にドラゴンがポスッと顎を乗せた。
甘えているらしい。
よしよしと空いた手でドラゴンのマズルを撫でてやると「ぐるるるる」と喉が鳴った。
すくすくと笑う生き物の背後から「随分楽しそうだね」と天使が声をかけた。
四枚の羽根が興味を示しているのか、ぱたぱたと細かく動いている。
天使の右肩を占領している猫は「にゃう」と小さく鳴いた。