じかんどろぼう

四十物茶々(あいものちゃちゃ)です。ゆっくりとSSを上げていきます。

【100日経っても幸せなヤツ】18日目

生き物はこの谷で生まれた。

この谷の底は、生き物にとって住処であり、全てを与える母であった。
生き物はそれをわかっている。
しかし、この谷の外の事が気になって仕方がない。
谷の外から来る他の生き物の存在が、外の世界の存在を確かな物にさせていたからだ。

谷の空はいつも七色に輝き、美しい。
生き物の真っ黒な目がそれをとらえると、きらきらと輝くのだ。
そのきらめきは、空を色を反射しているだけではない。

夢を持った瞳だった。

生き物はそのことをよく知っている。
夢は、生きる希望だ。
どんな些細なことでもそれを思うと胸が熱くなり、生きる原動力になる。
夢を持たずには、生きていけない。
生き物は、おそらく生涯この場で生きて、この場で死ぬ。
しかし、その夢をあきらめることはできなかった。

それがどんなに実現不可能だと言われていても。