じかんどろぼう

四十物茶々(あいものちゃちゃ)です。ゆっくりとSSを上げていきます。

【100日経っても幸せなヤツ】17日目

早朝、生き物の耳は聞きなれない音を拾い、目を覚ました。

安眠を邪魔したやつの存在は許せない。

生き物は勢いよく扉を開けると、家の前に陣取っていた巨大な虫に向かって蹴りを入れた。
異音の正体はこの虫の羽音だったのだ。
ぶわっと虫が飛びあがり非難の声を上げるように、生き物の周りを周回したが、生き物は手を払うことでそれを退けた。
しばらく辺りを回っていたが、虫の方も諦めて谷の上へと昇っていく。
朝日を受けながら登るその姿は、龍に似ていると生き物は思った。

いつか、この谷を出られたら――。

何が待つか分からない世界に生き物はワクワクしながら小屋の扉を閉じた。