じかんどろぼう

四十物茶々(あいものちゃちゃ)です。ゆっくりとSSを上げていきます。

【100日経っても幸せなヤツ】64日目

今日、生き物は水の調査をしていた。
森の生き物たちを癒していると思っていた水は本当に癒しの力があったのか。
生き物にとっては、確かに癒しの効果が実証されているが、他は、直接この目で確かめたわけではない。
木陰に隠れて、水場に近寄る生き物を一匹一匹確認する。
鹿、熊、水鳥、様々な物が来ては去っていく。
生き物はそのうちの一頭に狙いを定めて後ろを追いかけた。
生き物に気付くことなく水辺を離れた鹿はゆっくりと森の中を歩いて行く。
思い過ごしか?と思った次の瞬間、鹿の足が震え出すのが見えた。
生まれたての小鹿のように震えて横転した鹿に、生き物は驚き目を見開く。
暫くすると鹿は呼吸を止めた。

あの水は毒だったんだ。

生き物は意図せず止めを刺したことに気が付いて、頭を抱えた。
では何故、自分には癒しの効果があるのだろうか?
生き物はわけが分からず、固まった鹿の遺体を撫でていた。