【100日経っても幸せなヤツ】13日目
生き物に兄弟はいない。家族もいない。
しかし、生き物は孤独を感じたことはなかった。
谷の底に吹き抜ける風は日々柔らかく、池の水は澄んでいていつも喉を潤してくれる。
谷の鉱石は光を拡散し、谷の底はいつも七色の光に包まれていた。
生き物が孤独を感じるより大きく世界は平和で幸せだった。
しかし、生き物はこの幸せな世界から一度でいいから出てみたいと思っている。
それは君も持っている好奇心だ。
ガラクタ置き場から集めてきたロープを繋ぎ合わせながら、生き物は遥か彼方の空を見つめる。
真っ黒な瞳が揺れている。
長い耳がぴこぴこと揺れて、全身を覆う体毛がブワッと広がった。
自分の幸せは分かっている。
しかし、「幸せの先に行ってみたい」そう、思った。