じかんどろぼう

四十物茶々(あいものちゃちゃ)です。ゆっくりとSSを上げていきます。

【100日経っても幸せなヤツ】67日目

その日生き物は、ここ数日の睡眠不足を取り戻すように惰眠を貪り、目が覚めた時には夕方だった。
白夜のようにあまり明るさが分からない谷の底は、今日もキラキラと輝いている。
生き物はじっと空を見上げる。細い細いスキマの奥、空を大きな鳥が飛んでいるのが見えた。
生まれて初めて、生き物は鳥になりたいと思った。
この谷の外を見て見てみたい。
それは常々生き物が望んでいることだが、生き物には羽がない。この高い崖を超える術を持たない。
鳥は悠々と空を飛び、谷の切れ目から消えていった。
その日、生き物は初めて、大きな大きなものを作ることを決めた。