じかんどろぼう

四十物茶々(あいものちゃちゃ)です。ゆっくりとSSを上げていきます。

【100日経っても幸せなヤツ】9日目

今日も青い花は揺れている。

一輪挿しの水を取り替えながら、生き物は長い耳をぴこぴこと動かした。
何かが動く音がする。
水を取り替えた一輪挿しを定位置に置いて、生き物はゆっくりと寝床のドアを開けて外へと踏み出した。
ぐるぐると喉を鳴らす声が聞こえる。
生き物は音の方へとゆっくり忍び足で向かう。
大きな木の陰に隠れながら、谷の底の皿に底を覗き込むと一匹の野犬が怪我をしていた。

困った、と腕を組んで生き物は寝床へと帰る。
収納スペースを開き、大きな網を掴むとまた野犬の方へと歩き出した。

ばさりと音を立てて網を落とし引き上げる。
怪我をした野犬は網の中で暴れて居たが、地面に降ろされて網を外されたら、一目散に逃げていった。
長い黒い尾っぽが風に揺れている。

いいことをしたのではないだろうか。
生き物は胸を張って寝床へと帰った。